VPNパススルーとは?設定方法や仕組みをわかりやすく解説

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VPNのパススルーをイメージしたレインボーのトンネル

自宅や会社のルーターにvpnパススルーという設定項目があるけれど、これを有効にしないとVPN接続ができないのはなぜでしょうか。そもそもvpnパススルーを使うとセキュリティ面で心配なことはないのでしょうか。

こうした疑問にお答えします。

本記事の内容
  • vpnパススルー機能の仕組みと必要性
  • ルーターでのvpnパススルー設定方法
  • vpnパススルー利用時のセキュリティリスク

vpnパススルーとは、ルーターを介したVPN接続を可能にするために必要な機能です。バッファローやAtermなど多くのルーターにこの機能が搭載されています。

PPTPパススルーやIPSecパススルーなど、VPNプロトコルに応じた設定を行うことで、安全にVPN通信が利用できます。適切に設定すれば、デメリットも把握でき、安心してVPNを利用可能です。ぜひ最後までご覧ください。

目次

VPNパススルーとは?仕組みと必要性をわかりやすく解説

VPNパススルーは、特定のVPNプロトコルによる通信が家庭やオフィスのルーターを「通過」できるようにする機能です。

この機能は、特にPPTP、L2TP、IPSecといった古いVPNプロトコルを使う場合に必要不可欠。理由として、これらのプロトコルは「NAT(ネットワークアドレス変換)」対応が不十分なため、そのままでは通信がブロックされるケースが多いからです。

VPNパススルーが必要になる理由

VPNパススルーが必要とされる最大の理由は、ルーターのNAT機能によってVPN通信が遮断されてしまう問題の解決です。

NATはセキュリティやIPアドレスの節約のために多用されますが、古いVPNプロトコルの場合、NATルーターをそのまま通過できません。そこでVPNパススルー機能を有効にすることで、内部ネットワークのPCやスマホが、VPNサーバーへ安全に接続できるようになります。

例えば、会社のリモートワーク環境や海外から日本のサービスに安全にアクセスしたい場合、この機能は必須です。

対応する主なVPNプロトコルの種類

対応するVPNプロトコルは主に下記の通り。

  • PPTP(Point to Point Tunneling Protocol)
  • L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)
  • IPSec(Internet Protocol Security)

これらプロトコルの特徴を表でまとめます。

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プロトコル特徴セキュリティパススルーの必要性
PPTP古くからある、設定が簡単低い必須
L2TPPPTPより高いが単独利用は少ない中~やや高い必須
IPSecセキュリティが比較的高い高い必須
OpenVPN最新かつ広く使われる非常に高い不要
WireGuard高速・高セキュリティ非常に高い不要

近年はOpenVPNやWireGuardのような新しいプロトコルが主流になってきており、これらはNAT環境下でもVPNパススルー設定が不要な点が特徴です。

VPNパススルーとVPNサーバー機能の違い

多くの方が混同しやすいのが「VPNパススルー」と「VPNサーバー機能」です。両者は役割が全く異なります。

  • VPNパススルー:ルーターを通じて「VPNクライアント」が外部のVPNサーバーに接続する場合、その通信を通過させるだけの機能です。
  • VPNサーバー機能:ルーター自体がVPNサーバーとなり、ルーターの外部からLAN内にVPN接続を受け付ける機能です。

表で違いを整理します。

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項目VPNパススルーVPNサーバー機能
用途クライアントの外部VPN接続を補助ルーター自身がVPNサーバー
設定が必要な場面VPNクライアント利用時外部から自宅LANにアクセス
通信の方向LANから外部へのVPN接続外部からLANへVPN接続
対応機器一般的な家庭用ルーター一部の上位ルーター

このように、VPNパススルーは主にルーターから外向きの通信をパスさせるための機能である一方、VPNサーバー機能はルーターへの着信VPN接続を受け付けるための機能であることにご注意ください。

ルーターでのVPNパススルー設定方法を3ステップで解説

VPNパススルー機能は、PPTPやL2TP、IPSecなどの古いVPNプロトコルで通信を試みた際に、ルーターがその通信を通過させるために必須です。一般的なインターネット接続環境では、NAT(ネットワークアドレス変換)という仕組みがデータを管理しています。このNATによりVPN通信が遮断されるケースが少なくありません。

この問題を解決し、スムーズにVPNが利用できるようにするのがVPNパススルーです。

①:ルーターの管理画面にログインする

まず、必要なのはルーターの管理画面へのログイン。ブラウザのアドレスバーにルーターのIPアドレス(例: 192.168.0.1や192.168.1.1など)を入力し、ユーザー名とパスワードで認証を行います。

これが難しい場合は、お使いのルーターの取扱説明書やメーカー公式サイトを確認しましょう。

②:VPNパススルーの設定項目を探す

管理画面内では、「詳細設定」や「セキュリティ」、「NAT」「VPN」などの項目にVPNパススルー設定が含まれていることが多いです。メーカーやモデルによって項目の名称や場所は異なります。「PPTPパススルー」「L2TPパススルー」「IPSecパススルー」といった表記が並んでいる場合がほとんど。

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プロトコル設定項目名
PPTPPPTPパススルー
L2TPL2TPパススルー
IPSecIPSecパススルー

適切な設定項目が見当たらない場合は、ルーターの型番と「VPNパススルー設定方法」といったキーワードで検索すると、公式サポートページ等がヒットします。

③:利用するプロトコルのパススルーを有効にする

利用中のVPNサービスや接続方式に応じて、該当プロトコルのパススルーを有効(ON)にしてください。PPTP方式なら「PPTPパススルー」、IPSec方式なら「IPSecパススルー」、L2TP/IPSecなら両方のパススルーをONにします。

また、次の場合も併せて確認しましょう。

  • 設定変更後は必ずルーターを再起動する
  • ファイアウォール機能がVPN通信を遮断していないか確認する

VPNパススルー設定は、特にIPoE(IPv4 over IPv6)回線や、複数端末での同時VPN接続時に重要な役割を果たします。これらの手順に従うことで、ご自宅や会社の一般的なルーター(バッファロー、Aterm、TP-Linkなど)でもVPN利用がしやすくなります。

近年ではOpenVPNやWireGuardのような新しいプロトコルも増えており、一部の新型ルーターではパススルー設定が不要なケースや、「VPNサーバー機能」自体を内蔵したモデルも登場しています。最新ルーターの場合はこうした選択肢も検討するとよいでしょう。

VPNパススルーを有効にしても接続できない原因と対処法

VPNパススルーを有効にしてもVPN接続できない場合、複数の要因が考えられます。ここでは主な3つの原因と対処法について解説します。

ファイアウォールにブロックされている

VPNパススルー機能を有効にしても、ルーターやパソコン側のファイアウォールがVPN通信をブロックしている可能性があります。

ファイアウォールはネットワークのセキュリティを保つために不要な通信や不審なトラフィックを遮断します。VPN接続では特定のポートやプロトコルを許可する必要があります。

  • PPTPの場合:TCP 1723、GREプロトコル
  • IPSecの場合:UDP 500、UDP 4500

VPN接続ができない場合、まずファイアウォールの設定画面でVPN通信に必要なポートやプロトコルが許可されているかを確認しましょう。必要に応じて、例外設定やポートの解放を行ってください。

企業ネットワークの場合、システム管理者に相談することも一つの方法です。

IPoE(IPv4 over IPv6)環境が影響している

近年、IPv6接続(IPoE方式)が普及しつつありますが、IPoE環境では従来のIPv4ベースVPNが正常に動作しない場合があります。

この環境下では、プロトコル変換や特殊なNAT処理が行われるため、VPNパススルー機能による従来のVPN接続が不安定になったり接続できなくなったりします。

対策としては、以下の方法が効果的です:

  1. IPv6対応のVPNプロトコル(OpenVPNやWireGuard)を利用する
  2. IPv4接続サービスを利用して切り替える
  3. ルーターやプロバイダーのサポートに相談する

VPNサーバー側の設定に問題がある

クライアントやルーター側ですべて設定が正しくても、VPNサーバー側の設定不備により接続できないケースも多いです。

特に、以下の原因が考えられます:

  • ユーザー認証情報の誤り
  • ポート開放の不足
  • VPNプロトコル未対応

サーバーで利用しているVPNサービスのマニュアルやサポート情報を確認し、利用するプロトコル向けの設定が適切に行われているかをチェックしてください。ポートの開放、ユーザー権限の確認、必要な証明書の導入なども重要なポイントです。

接続できない原因が複数組み合わさることもあるため、各ポイントを1つずつ検証することが重要です。

VPNパススルー利用時のセキュリティリスク

VPNパススルー機能を利用することで、ルーターがVPNトラフィックを通過させます。家庭や企業のネットワーク環境で簡単にVPN接続ができるようになります。

しかし、その利便性の裏側には重要なセキュリティリスクが潜んでいます。以下でその主なリスクを解説します。

古いVPNプロトコルが持つ脆弱性

VPNパススルー機能はもともと、PPTPやIPsecパススルー、L2TPといった古いVPNプロトコルの通信をルーター経由で実現するために設けられました。これらの古いプロトコルは、現代のセキュリティ基準に見合わない脆弱性が多数存在します。

  • PPTPパススルーは、認証方式や暗号強度に重大な欠陥があり、容易に解析された事例も報告されています
  • IPsecパススルーやL2TPも、設定によっては攻撃者に情報を盗まれるリスクが指摘されています
  • これら古いプロトコルは、現代のルーターやOSベンダーも非推奨としている場合が多いです

新しいプロトコル(例:OpenVPN、WireGuard)では、NAT越えが標準でサポートされます。VPNパススルー機能そのものを必要としません。

不正アクセスの踏み台にされる可能性

VPNパススルー設定を有効にすることで、外部から内部ネットワークへのVPNトラフィックが通過しやすくなります。これにより、本来許可していない外部の端末がVPN経由でネットワークへの侵入を試みたり、不正アクセスの踏み台として悪用されるリスクが高まります。

  • パススルー機能を有効にしたまま適切な制御を行わないと、管理外の端末や悪意のある通信も通過してしまう可能性があります
  • 特にPPTPやL2TP等、脆弱性の残るプロトコルで運用すると、盗聴・セッションハイジャックなど具体的な被害を招く恐れがあります
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リスク内容具体例
プロトコルの脆弱性PPTPで認証情報が漏洩、L2TPで暗号強度不足
不正アクセスVPN経由で外部から侵入される、Bot化した端末による内部侵害

セキュリティを高めるためにできる対策

これらのリスクからネットワークや情報資産を守るためには、以下の対策を推奨します。

  1. 古いVPNプロトコルの使用を避ける
      可能な限りOpenVPNやWireGuard等のより強固なVPNプロトコルに移行しましょう。これらのプロトコルはセキュリティ強度が高く、NATトラバーサル機能も標準搭載されています。
  2. 必要な時だけパススルー機能を有効にし、不要になったら無効化する
      利用しないプロトコルのパススルー設定はすぐに無効にし、攻撃対象を減らしましょう。
  3. VPN接続元・接続先のアクセス制御
      ルーターやファイアウォールの設定で、VPN通信の許可元・宛先を限定します。
  4. 定期的なファームウェアアップデートと脆弱性対策
      機器のソフトウェア更新を怠らず、既知の脆弱性から守ることが重要です。
  5. ログ監視の徹底や二要素認証の導入
      不審なVPN利用を早期に発見し、より強い認証方式を活用しましょう。

上記の対策を実施することで、VPNパススルー運用時に生じうるセキュリティリスクを大幅に低減できます。プロトコルやルーターごとの仕様に応じた設定運用を心掛けることで、より安全で安定したリモートアクセス環境を築けます。

VPNパススルー以外の最新VPN接続方法

従来のVPNパススルー機能は、主に古いVPNプロトコル(PPTP、IPsec、L2TP)での接続トラブルを解消するためにルーターに搭載された技術です。現在はより高いセキュリティや安定性を求める動きが強まり、VPNパススルー以外にもさまざまな最新のVPN接続方法が登場しています。

以下では、主要な3つの方法についてわかりやすく解説します。

より安全なVPNプロトコルを利用する

VPNパススルー機能は本来、古いプロトコルであるPPTP、L2TP、IPsec用に設計されています。近年はより高安全性・高性能なプロトコルが一般的になりました。

例えばOpenVPNやWireGuard、IKEv2などは、現代の多くのルーターやVPNサービスが標準対応しているプロトコルです。NAT(ネットワークアドレス変換)などの課題もクリアしています。

  • OpenVPN:オープンソースで高い柔軟性と信頼性を持つプロトコル
  • WireGuard:動作が軽く、設定も単純で最新ルーターやVPNサービスで急速に普及
  • IKEv2:モバイル端末との相性がよく、切断や再接続に強み

これらのプロトコルは従来のVPNパススルー設定を必要としません。ルーター環境でも安定して利用できるのが特徴。

セキュリティ面でも業界標準を満たしているため、できるだけ新しいプロトコルの利用を推奨します。

VPNサーバー機能付きルーターへ買い替える

近年は、VPNサーバー機能を標準搭載した家庭用・業務用ルーターも普及しています。このタイプのルーターでは、本体に直接OpenVPNやWireGuardサーバーを立てることが可能。

従来のVPNパススルー設定を細かく調整する必要がなくなります。

例えば以下のような利点があります。

  • 設定画面が直感的で、専門用語に不安がある方でも扱いやすい
  • パソコンやスマートフォンの外部から自宅ネットワークへ安全にアクセス可能
  • ファームウェアが自動的にプロトコル対応・セキュリティ対策を実行

ルーターを新調する際は、「VPNサーバー搭載」や「OpenVPN/WireGuard/SoftEther対応」と明記されたモデルを選ぶとよいでしょう。

VPNサービスの専用アプリを活用する

近年主流となっているのが、VPN専用アプリを使う方法です。市販や有料VPNサービス(NordVPN、Surfshark、ExpressVPNなど)のほとんどは、スマートフォンやパソコンに専用アプリをインストールするだけでVPN通信が可能。

この方法の特徴・利点を挙げます。

  • アプリが自動的に最適なプロトコル(OpenVPNやWireGuard等)を選択
  • ルーター設定の手間がなく、VPNパススルーを意識せずに使える
  • セキュリティアップデートやサポートが充実していて初心者でも安心

このようなVPNアプリは、旧来のVPNパススルー問題やルーターごとの差異に悩まされることなく利用可能。簡単・安全にVPN接続したい方におすすめです。

まとめ:VPNパススルーはルーター設定でVPN接続を可能にする機能

VPNパススルーは、会社や自宅のルーターを通じてPPTPやL2TP、IPsecといった古いVPNプロトコルによる通信を可能にする大切な機能です。通常、NATを使用するルーターではVPN通信が妨げられることがありますが、VPNパススルー機能を有効にすることで、これらプロトコルのパケットが正しくルーターを通過し、安定したVPN接続が実現できます。

ただし、セキュリティ面では古いプロトコルの脆弱性や不正アクセスのリスクが残るため、運用には注意が必要。VPNパススルー設定の際は慎重な検討が重要です。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント
  • VPNパススルーとは、ルーターとVPNプロトコルのNAT問題を解消し、外部サーバーと安全なトンネルを構築するために不可欠な設定
  • ルーターの管理画面でVPNパススルーを有効化する手順や、PPTPパススルー、IPsecパススルーなどプロトコル別のポイントについて具体的に解説しました
  • より安全なVPN接続が必要な場合は、OpenVPNやWireGuardのような新しいプロトコルや、VPNサーバー機能付きルーターの導入も検討可能

この記事を読むことで、ルーター設定に不安があった方もVPNパススルーの仕組みや具体的な設定方法、安全に使うためのポイントを理解できます。今後、バッファローやAtermなどのルーターでご自身により適切なVPN接続環境を構築できるようになります。

VPNパススルーを活用して、ご自身のネットワーク環境をさらに快適・安全に整えましょう。

VPNパススルーのよくある質問

VPNパススルーは必要ですか?

自宅やオフィスのルーター越しにVPN接続を使いたい場合は必要です。
VPNパススルーとは、ルーターがVPNの通信をブロックせず、そのまま通過(パススルー)させる機能です。
この機能が有効になっていないと、VPNソフトを使っても接続できないことがあります。

バッファローのVPNパススルーとは?

バッファロー製ルーターに搭載されている、VPN接続を許可するための設定機能です。
IPSec、L2TP、PPTPなど主要なVPNプロトコルに対応しており、設定画面でパススルー機能を有効にすることで、自宅や社外から安全にネットワークへアクセスできるようになります。
テレワークや遠隔操作などでVPNを使う際にとても重要な機能です。

VPNがダメな理由は何ですか?

VPNが「ダメ」と言われるのは、使い方によっては以下のような問題が起こる可能性があるからです

  • 悪用されるケースがある:VPNは通信を暗号化するため、違法行為や不正アクセスに使われることがあり、企業や学校で制限されることがあります。
  • 通信速度が遅くなる:中継サーバーを経由するため、通常の回線より遅く感じる場合があります。
  • 一部サービスが利用できなくなる:動画配信や銀行など、一部のWebサービスはVPN経由のアクセスをブロックすることがあります。

ただし、正しく使えばセキュリティやプライバシー保護に優れた非常に便利なツールです。「VPNがダメ」というのはあくまで一部の使い方や環境での話にすぎません。

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